「ゆ、夢乃くんってお金持ちなんですね」

うちは母子家庭のアパートだし不便も不満も全然ないけど、いつかこんなお家をお母さんにプレゼントできたら喜ぶだろうな……。


「金持ちなのは俺じゃなくて親だね」

「失礼ですがどんなお仕事を……?」

「どっちも会社経営者。社員もいっぱいいるし手広くビジネスしてるらしいからあんまり家に帰ってこないけど」

夢乃くんはまた紅茶に口をつける。


……この広い家にひとりきりって寂しいだろうな。

うちのお母さんも看護師で夜勤が多いから私もひとりでいることが多いけど、同じアパートの住人とは仲良しだし、お隣さんもよく晩ごはんをおすそ分けしてくれるから寂しさはない。