私たちはお弁当を食べ終わって、昼休みもあと残りわずかになった。


「じゃあ、次は俺たちの話をしようよ」

夢乃くんがじっと私のことを見ている。空気が一瞬で変わって私の心臓はまた不規則な動きを繰り返していた。


「あの時の瑠花の言葉、本当に嬉しかった」


――『私は夢乃くんのことが好きだから誰にも渡したくないです!』

脳裏によみがえるセリフ。

全部本心だけど、思い出すと恥ずかしくて穴があったら入りたい……。


「また聞きたいな」

甘えるような夢乃くんの声。


「い、言いませんよ」

むしろ言いたくても言えない。顔がカーッと熱くなる中で夢乃くんが真剣な顔をした。


「そうだよね。次は俺が瑠花に言わなくちゃ」

まるで吸い込まれてしまいそうな瞳で私を見つめていて、静かな音楽室ではやたらと鼓動がうるさく聞こえる。


「俺ね、女の子たちに困ってて俺を好きにならなそうな子が彼女のフリをしてくれたらいいなって、そう思ってあの日瑠花に声をかけたんだ」

はじまりはだれもいない放課後。

接点なんてなにもなくて、あの頃の私たちに同じところなんてひとつもなかった。