夢乃くんの優しさに涙を流しながら彩芽ちゃん「じゃ、なんで……」と震える声で聞いた。


「そういう嘘をつかせている原因を作ったのは俺だし、彩芽のことは二の次で友達と遊ぶほうが楽しかったのは事実だから」

「………」

「だから約束のことなんて忘れてたし、その間連絡してくれた彩芽の電話にも気づかなかった。俺の中途半端な気持ちが招いたことだから彩芽の嘘をどうこう言う資格はないよ」

「桐人……」

「知らないふりをしようって音弥とも決めたことだったし、彩芽がイタズラされてなくても俺が彩芽を傷つけたことは変わらない」


夢乃くんの心につかえていたもの。

後悔は取り戻すことはできないけれど、これから変わることはできるはず。彩芽ちゃんだってそう。


「彩芽の気持ちは嬉しいよ。今でもこうして俺を見てくれてること。妹みたいに可愛いし大切にしたいと思ってる。でもそれは彼女としてじゃない」

優しさのなかに突き放す強さもあって、彩芽ちゃんは目を反らさずにそれを聞いていた。


「俺は彩芽と付き合うことはできない」

夢乃くんははっきりとした言葉で言った。