「そういう不器用なところも見てられないっていうか……」
音弥くんはそう言ってバットを置いた。
「俺は八塚に笑っててほしいんだよ。だから夢乃のこと、八塚に譲ってやってよ」
その顔がなんとも切なそうで、気持ちを言うことができない私と同じような瞳をしていた。
「……音弥くんって彩芽ちゃんのこと……」
「あ?」
「い、いえ、なんでもないです!」
絡み合っているそれぞれの気持ち。
これがゲームだったら自分の思い通りに進むことができる。自分が選んだ相手、自分の理想のルート、思い描く結末を自分で作ることができる。
でも現実はそうじゃない。
傷つくこともあるし、間違うこともあるし、とても難しい。
それでもみんな恋をする。
私も夢乃くんに、恋をしている。



