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次の日。一緒に帰る約束を夢乃くんとしてたのに彩芽ちゃんから連絡があって夢乃くんはそっちを優先した。
彩芽ちゃんに対しての後ろめたい気持ちがあるのかもしれない。
ふたりの事情を知って、ますますそこに立ち入ることができないと思った。
そんな憂鬱な気持ちを抱えたまま帰っていると「よう」と誰かに声をかけられた。
「……音弥くん、なにしてるんですか?」
顔や声が右京さま似でテンションが上がっていた頃が遠い昔のように感じる。
今はそんなことよりも夢乃くんで頭がいっぱいだ。
「ストレス発散に付き合えよ」
「そんな気分じゃないです」
「てめえの気分は関係ねーんだよ」
「わっ、ちょ、ちょっと……!」
連行されるように連れていかれたのは勿論またバッティングセンターだった。
カキーンと気持ちいい音が響く中で、私の気分はやっぱり落ちこんだまま。
景品のガラスケースの中には夢乃くんがくれたハムスターのシャーペンがまた補充されていた。
世の中にひとつだけのものなんてない。
こうしてなくなればまた代わりのものが置かれる。夢乃くんの彼女という席も私がいなくなればきっとすぐに埋まってしまうかもしれない。
「お前って夢乃のこと好きなの?」
「え……?」
音弥くんが150キロの球を打ち返しながら言う。



