夢乃くんの低い声と背中から伝わってくる体温。

男らしい腕が首に巻きついて、おまけにいつもの夢乃くんの匂いとシャンプーのシトラスの香りでクラクラしてしまう。


「瑠花がいけないんだからね。俺に会いたいなんて言うから」

身体がゾクッとした。


からかわれていても、ふざけてる延長だとしても、私はやっぱり夢乃くんだからドキドキしてしまう。

夢乃くんは私の身体を自分のほうに向けた。そして……。


「目つぶって」

目をつぶったらなにをされるか分からない。それでも淡い期待のほうが勝ってしまい私はゆっくりとまぶたを落とす。


……ドクン、ドクン。

目の前に夢乃くんの気配を感じて、唇になにかが当たった。

それは柔らかいというよりも〝別のもの〟

ビックリして目を開けると、そこにはカクカクと首を左右に揺らしているハムスターのシャーペン。


「これって……」

「うん。欲しそうに見てたじゃん」

それはバッティングセンターで見たあの景品だった。