『瑠花?』

夢乃くんの声。

名前を呼ばれただけなのに胸が熱くなる。


『なんか声が聞きたくなっちゃって。今なにしてた?』

夢乃くんのことを考えてました、とは言わずに『部屋で寝てました』と普通に答えた。


『なんか最近、瑠花とまともに話してないような気がしてさ。ごめんね』

夢乃くんの頭の中には彩芽ちゃんの存在がある。だから私といても上の空で、いつもなにかを悩んでた。

でもそれにたいして夢乃くんを縛るようなことは言えないし、そんな風にしたら私は夢乃くんが不都合さを感じていたファンの子たちと同じになる。


『ぜ、全然大丈夫ですよ!夢乃くんには夢乃くんの日常がありますし、私も乙ゲーに集中したいと思ってたので逆に時間ができて趣味に没頭できますし』

あれ、私なにを言ってるんだろう。


『だから夢乃くんがいなくても寂しくないし、そもそも私たちは本当に付き合ってるわけじゃないから夢乃くんが私に気を遣う必要はないっていうか……』

夢乃くんはなにも言わない。

その代わり、私の瞳なら涙が溢れていた。


なんの涙なのか、どうして泣いているのか自分でも分からない。分からないけど……。


『夢乃くん、会いたいです……っ』

本当はこれが言いたかった。