夢乃くんにご注意ください



「ねえ、そういえば昔ここで桐人と音弥が張り合ってどっちがハンバーガー多く食べられるか競ったことがあったよね」

彩芽ちゃんの言葉に話は3人の中学時代へ。


「あったね。音弥が帰り吐きそうになってバスに乗れなかったやつ」

夢乃くんが懐かしそうな顔をして、それに感情を引っ張られるように自然と笑みがこぼれていた。


「余計なこと覚えてんじゃねーよ。まあ、勝負は俺の勝ちだったけど」

「え?勝ったの俺だよ」

「あ?そんなわけねーだろ」

「はは、私覚えてるよ。音弥がトイレに行ってる間に私の残ったハンバーガーを桐人が食べてくれたんだよね。だから結果的に多く食べたのは桐人だよ」


怒る音弥くんがいて、なだめる夢乃くんがいて、嬉しそうにふたりを見る彩芽ちゃんがいる。

私には踏み入ることができない場所。


3人で過ごした中学時代を私はなにも知らないけど正直、羨ましい。

私はその頃から乙ゲーばっかりやっていたし、放課後にファーストフード店に行く友達もいなかったから。

すると彩芽ちゃんはミルクティーを飲みながら少しだけ視線を落とした。


「楽しかったよね、あの頃。……色々あったけどさ、それでもバカなことばっかりやってた中学に戻りたいな」

彩芽ちゃんの手がギュッとなったのを私は見逃さなかった。