イジワル男子の甘い声



「双葉のためだ。今から頑張れば間に合う」


「んー…」


「もし赤点なんか一枚でもあったら双葉が大切にしてるもの処分するから」


っ?!


「え?!何それ!」


「好きなこと我慢して必死に勉強してる人たちだってたくさんいる。パパの上司の娘さんなんて…」


聞きたくない。


聞きたくないよ。


パパは大変だったかもしれないけど、私はちゃんと幸せだったのに。


パパが違う人みたいで寂しいけど、私はそれでも、唯一、sakuの歌で落ち込み過ぎず頑張れているんだ。


それなのに、それを私の手から奪うなんて。


「……わかったね?」


上司の娘さんの話なんて、聞かなかった。


心の中で耳を塞いだ。


「うん。わかったよ」


私がそう返事をすると、パパは満足そうに頷いてから食べ終わった食器を流しに片付けて自分の部屋に入って行った。