1人になった玄関で、持っていた紙袋の取っ手をギュッと握る。


いつも笑顔でただいまといって私の頭を撫でてくれたパパはもういない。


やっぱり変わってしまった。


「ご飯…作らなきゃ」


私は、柏場に渡しに行くはずだった紙袋を玄関の前に置いてから、キッチンへと戻ってエプロンを着ける。


調理器具を準備していると、パパが着替えを持ってお風呂場に向かって行く音がする。


一緒に住んでるのに…。


まるで、パパには私が見えていないみたいだ。


『双葉はママに似て料理がうまいな』


『今日の夕飯は何?』



当たり前だと思っていたそんな会話でさえ、まるで最初からなかったみたい。



私は、一度部屋に戻ってスマホとイヤホンを取ってsakuの曲をかけながら、再び料理を始めた。