「よかったぁ…」
声のトーンは変わらないままだけど、少し口角が上がってる表情を見る限り大丈夫だ。
「親父さんには、」
「へ?」
「あれから、何か作ったかよ」
「あぁ…ううん。作っても食べられないこと増えたし…最近は全然。前に優が作ってやったらって言ってくれたのに…ごめん」
パパとのこと、何にも解決できていない。
このまま一生離せなくなって、知らない女の人とパパが一緒になるのを見るのかと思うと正直つらい。
「弟」
「えっ?」
突然お箸を置いた彼が、海の方をまっすぐ見ながらつぶやいた。
「ミズキ、柏場 瑞紀。俺の弟」
「…へ、?」
なにを言っているのかわからなくて、お箸で持ってた唐揚げを弁当箱にコロンと落としてしまう。