「お願いだからよそでそう言う顔するなよ」
「そういう顔って…?」
「あーなんでもねー。バカの相手疲れる」
「バカって言わなくなって…」
そんな意地悪なこといいながら、手は握ったままだしお弁当の入ったバッグだって大切に持ってくれてること知ってる。
「覚えたと思ったのに。感動で全部吹っ飛んだ?」
「え、なんの話…」
「別にいい」
「そんな…」
まるで不貞腐れた子供みたいに、顔をプイッとした柏場はなんだかちょっと可愛かった。
あ。
もしかして。
名前?
「柏場くん、もしかして私が下の名前で呼ばないから怒ってるの?」
エスカレーターを降りてズンズン歩きながらモールの出入り口に向かう柏場の背中を追いかける。
これがまた…歩いてるくせに脚が長いもんだからなかなか追いつけない。



