「いただきます」


すごく小さい声だったけど、柏場はたしかにそう言ってお箸を持った。


そして味噌汁をズズッと飲む。


彼にこうやってご飯を作るのは何回目だろう。結構作ってるはずだけど、今日はなんだか久しぶりでちょっと緊張する。


「どう?」


「ん、んまいよ」


「……え」


「なんだよ」


思わず固まってしまう。
だって、だってだってだって。
あの柏場が、うまいって。
私のご飯を食べて美味しいって。


鼻の奥がツンとする。


「柏場くんのうまい、いただきました!」


「そんな騒ぐな。朝から。余計頭痛くなる」


「う、すまん」


「バカ」


柏場は私にそう吐くと、厚焼き玉子にお箸を伸ばして口に入れる。


私の使ったものが柏場の手によってどんどん運ばれて行くこの感じは、やっぱりすごく嬉しい。