イジワル男子の甘い声



見張るったって、どうすればいいんだ。


ポツンと取り残された寝室で、部屋を見渡しながら心の中でつぶやく。


それにしても、何にもない部屋だ。


あるのは、セミダブルのベッドに、ダークブラウンのクローゼット。


カーテンが閉まったままの窓が2つ、本当にそれだけだ。


「ん…っ」


っ?!


ベッドから声がして、慌ててそちらに目を向ける。


起きたか?!



「か、柏場くん?」


小声で名前を呼んでみると、彼の体がもぞもぞっと動いて、不覚にも可愛いと思ってしまった。


酔ってるせいもあるのか、いつもの鋭い感じとは違って少しだけ柔らかい。


ずっとこうだったらいいのに…。


寝顔を見つめながら、ゆっくり腰を落として、目線を柏場の顔の近くに持っていく。


ちょっと乱れた前髪の間から見える瞼。
羨ましいくらい長いまつ毛。