「あ、卵…安い」
『お一人様3パックまで』と大きな文字と鮮やかな値札ポップが貼られた段ボールの中には卵パックが敷き詰められている。
『ぐちゃぐちゃの卵焼き、入れてやればいい』
ふと、柏場のそのセリフが頭をよぎった。
柏場があんな冗談言うなんて、びっくりしたけど。
最近構ってくれないパパに仕返ししてもいいんじゃないか、そのセリフを思い出してそんなことを思う。
でも、そんな嫌がらせするなんてやっぱり今は考えられない。
余計嫌われる。
手のかからないいい子だって、パパがずっと私の味方でいてくれた分、そんな子でいなきゃってずっと思っていた。
だけど…ほんの少し、
反抗、してもいいのかな、なんて。
何度も頭によぎって。
私は、卵パックを手に取った。



