「お前の親父さんは、多分ちげーよ」
「……」
「根拠とかないけど、お前見てるとそんな簡単に手放すような人じゃねーと思う」
「…うっ、」
なんで柏場がそんなこと言うんだ。
全然意味がわからないのに、目頭が熱くなって、体中が熱くなる。
「意味…わかんないよっ、うっ」
「だな」
柏場のその返事と同時に、涙がジワっと溢れて、スーッと流れていく。
「こいつがあのsakuなんてありえない」
そう突き放して逃げたのは私なのに。
雨が降るとわかって、私の手を引っ張ってくれたこと、
パパから隠れられるようにかくまってくれたこと、
今、こうやって私の話を聞いて、きっと得意じゃないのに励まそうとしてくれたこと、
一つ一つが確実に、
柏場が私たちが思ってるよりも優しいやつだって、
ノアが言うようにもしかして誰よりも繊細なんじゃないかって、
思えてくる。
「ぐっ、ごめ…ん…」
柏場のうちの玄関の前で、
私は泣きながら、そう小さく呟くのが精一杯だった。