「sakuのこと知ってるの?」


「だったらどーすんの」


私が助けを求めて話したとき、わかんないって顔したくせに。


「…ちゃんと、説明してほしい」


「……」


柏場は、黙ったままドア枠を背中でなぞるようにその場にしゃがみ込んだ。


「俺が、sakuだよ」


っ?!


「フッ。ふざけたこと言わないでよ…」


思わず笑いが出ちゃう。
こんな時に何の冗談を言っているんだろうか。


「あなたの声で、あなたの歌で、私の人生は変わりました。初めてあなたの声を聴いた衝撃を、よく覚えています」


「やめてっ!」


柏場にあの手紙の内容を見られた、それだけで恥ずかしくて死んじゃいそうなのに。


自分はsakuだと変なことを抜かして、ここで私の手紙の内容を空で読み上げるなんて。


「すげぇ、惚れてるのな」



「っ。嘘だ…」