「ま、ね。」

「でも主任になったんだろ?技術で初めての女性役職者だって、こっちでも話題になってた」

「うちの会社、体質古いから」

「そうだな。俺も色々言われるわ」

老舗と言われる電機メーカーのうちの会社は、その体質も老舗仕様だ。結婚してない男性が管理職になる事は稀だし、女性が役職者になるのはもっと稀だ。

「でしょうね。でも本社に行ったんだから、出会いだってあるんじゃない?派遣さんだってこっちみたいにおばさんじゃないんでしょ?」

「綺麗な派遣さんかぁ、そりゃいるさ。でも出会いはないなぁ。で、そういう松森はどうなんだよ?」

「出会い?ある訳ないじゃない。技術のオトコなんて、同じ技術にいる女性社員はオンナじゃないって思ってるんだから」

私が会社で接するのは主に所属する技術部と職場のある技術棟にいる人間だ。そこにいる人に女性として意識してもらえてないんだから、職場での出会いは皆無といっていい。

「んじゃ、彼氏はいない?」

「残念ながら」