「やっぱりいたか」

カウンターに座った私を認めると、迷いなく隣に座った。

「こっち来てたの？」

「ああ、今日はこっちの人事部と打ち合わせだったんだ。もうすぐ定期異動だからな」

「そっか。飯塚は向こうでも人事だったもんね。今は課長さんだっけ？」

「そっ、会社史上最年少で。知っててくれたとは嬉しいなぁ」

注文した生ビールを美味しそうに飲みながらにかっとこちらを見て笑う。

「一応ね、同期だし」

「で、松森早希子は相変わらず？」

「うん、相変わらず。オシャレもせずに作業着来て毎日頑張ってる」

そう、頑張ってる。入社して十年、毎日会社に行って、この駅前に立つ会社の借り上げマンションに住み続けて、大して遊びもせずに、頑張ってる。

「技術部なんだから、そりゃ作業着だしオシャレも出来ないだろ」