「……ってぇ」



気が付くと目の前に楠見が倒れこんでいた。



「…っ!楠見先輩っ!大丈夫ですかっ!?」



慌てて澪和が駆け寄る。

楠見は



「来んなよ。お前に心配してもらう義理はない」



冷たい言葉を投げかけた。

澪和の心が痛む。



殴った側の西条はというと、楠見の顔面を殴った右手をまじまじと見ている。

きっとこういう事(喧嘩)には人一倍慣れているはずの西条だが、今日はなんだか様子がおかしい。



「西条先輩っ…」


「……もういい」


「…え?」



西条の方を見る澪和に向かって言葉を発する。

澪和は思わず言葉が漏れた。

西条はスっと拳を下げ、



「帰るわ」



その一言だけを残すと、元来た道を1人で戻って行った。



「西条先輩っ!」



澪和の叫びを背中で聞きながらーーー