「…翼、真弓に聞いたの?」


「うん。さっき偶然会って、橋本さんが教えてくれたんだよ。…拒んで傷付いてるのは千夏も同じだってことも」



翼は千夏を体から離すと千夏を優しい瞳で見つめた。




「もう無理に求めたりしないよ。だから安心して。俺はちーが受け入れてくれるまでいつまでも待つから」



翼が笑ってポンポンと千夏の頭を撫でると、千夏は翼に抱き付いた。




「ちー?」

「…翼。ずっと“ちー”って囁いてて。それなら私……大丈夫だよ」



翼は千夏の顎を優しく持ち上げると、甘くて深いキスをした。


翼はそのまま千夏をベッドに運ぶ。




「ちー…。…ちー…っ」



千夏を感じながら何度も何度も呪文のように、千夏の名前を囁き続ける翼。



もう、過去なんて思い出せない。

心の傷も痛くない。


何も恐くない…。





「ちー…大好きだよ…」






翼の体温を全身で感じながら、千夏は過去の傷が癒えていくのを実感した。




優しい翼の愛の魔法が

千夏の体中を駆け巡る。





その日2人は、お互いの全てに触れた気がした。



奥底まで触れ合える相手などそうはいない。




その全てを理解し合える相手こそが“運命の人”なのだと


2人は思った。