2人が隼人と真弓を捜していると、千夏が翼の腕を引っ張った。



「ちー?どうしたの?」

「ひよこがいるの。ほら」



千夏が指差す方を見ると、そこには段ボールの中に入れられた沢山のひよこが売られていた。


千夏は屋台の前に屈むと、黄色くて丸い小さなひよこを手のひらに乗せる。



「飼おうよ、翼。可愛いよ」

「飼ってもいいけど、ニワトリになったら大変だよ?」

「あっ!そっか。ひよこはニワトリになるんだもんね」



部屋の中を駆け回るニワトリを想像した千夏は、名残惜しそうにひよこを段ボールに戻した。



「ごめんね、ぴぴ丸。いい人に飼われてね」

「ぴぴ丸って…。もう名前付けちゃったの?」

「うん。ピー助とかピー子だとありきたりでしょ?だからぴぴ丸」



飼うワケでもないひよこに勝手に名前を付けた千夏。




「…じゃあ俺んちでも飼えるぴぴ丸をすくいに行こうか」

「え?」



翼は千夏の腕を引っ張り上げ立たせると、ある屋台を探し始めた。


2人が着いた場所は金魚すくいの屋台。




「金魚なら飼えるだろ?取ってあげるよ。どの子がいい?」



翼と千夏は金魚の前に屈むと、水桶の中を覗く。




「この黒い子がいい♪黒くて目が大きいのが、翼に似てる」

「出目金か。よーし、任せとけ」



翼は千夏が指差した金魚に狙いを定めると、ソッとポイを水に沈め出目金をすくい上げた。