「…ごめんね。優しいフリなんかして。…俺はちーに過去の俺を知られて嫌われるのが恐かった。だからさっき、あんな事を…」



翼が情けなく笑い息を吐くと、千夏は翼の腕に寄り添った。




「…私ね、厄介な事になるのなら…傷付くくらいなら、好きな人や彼氏の過去や隠し事なんて知らない方がいいと思ってたの」


「うん。俺もそう思ってたよ」


「でもね…私、翼の事は全て知りたい。…そばにいたいから、理解したいから全部知りたいよ」



千夏が涙で掠れる声で呟くと、翼はキツく千夏を抱き締めた。


千夏も翼の背中に腕を回し、強く翼を抱き返す。




「…ちーは俺の過去を知っても俺から離れないの?恐くないの?」


「うん。私は優しい翼を知ってるもの。…だから大丈夫だよ」


「俺もちーの全てが知りたい。こんな気持ち、初めてだ」



翼は千夏の耳元に顔を寄せると、優しくでも少し震えた声で囁いた。




「ちー…大好きだよ」



何か言おうとするが涙で声が出ない千夏を見た翼は、触れるだけの優しいキスを落とした。




本当に伝えたいこと。

それは言葉にしなくても伝わるもの。





優しく吹く風に髪を靡かせながら2人は何度も唇を重ねた。