「ちーは何を専攻してるの?」

「私は社会学部だよ。この大学で一番レベルの低い学部。私、頭悪いからギリギリで入れた感じ」

「賢い女の子より少し抜けた女の子の方が可愛いよ」



翼は優しく微笑むと、千夏の頭をポンと叩いた。



「…あんまり誉められてる気がしない」



口を尖らせながらも内心喜んでいる自分に気付いた千夏。



大学に着いた4人は隼人と翼、真弓と千夏に別れ、自分たちの講義を受けに向かった。




「何よ、千夏。持田さんといい感じじゃーん♪付き合い立てのカップルみたいな雰囲気だし」


「そんなんじゃないよ。一晩2人でいても何もなかったもん。…翼は私なんかよりずっと大人だよ」


「まぁ年上だしね。付き合う付き合わないは置いておいて、千夏は持田さんの事どう思ってるの?」



真弓の問い掛けに千夏は顔を赤く染める。




「あらら、そんなに惚れちゃったか♪」



千夏は否定する事なく真弓の腕を掴み、講義室へと向かった。



講義室に着き、席に座ってからも真弓は翼の話ばかり持ち掛ける。



「持田さんは見てのとおりイケメンよ。あんまりウカウカしてると押しの強い女に取られるよ?」


「そんな事言ったって、昨日知り合ったばかりだよ?付き合うも何も、私はまだ翼の事知らないし翼だって私の事、友達の彼女の友達にしか見てないと思う」


「恋愛に時間なんて関係ないよ。お互いの全てを知るのは恋人になってからでも遅くないんじゃないかな?」




確かに恋愛に必要なのは時間じゃない。


でも私は今まで、相手の奥底をよく知りもしないのに好きだからと付き合ってダメになってきた女だ。



もう中途半端な恋愛をして傷付くのは嫌…。





千夏の心に残る過去の恋愛の傷が彼女を臆病にしていたのだった。