「もう空を見上げる必要も、涙を我慢する必要もないよ。ちーは俺の腕の中で泣けばいいだろ?」


「ふふっ。そうだね」


「でもちーに変な癖があってよかったよ」


「ん?なんで?」




翼は千夏に近寄り、背中を曲げると耳元で囁いた。




「沢山いる人の中から、ちーを見つけ出せたからね」




翼は何回、私を恋に落とすのだろう。

きっと数えてもキリがないね。




だって

今までも何度も落ちてきたから。



きっとこれから新しく始まる人生の中でも、翼は私を簡単に何度も恋に落とすのだろう。





千夏は翼を見つめながら、そんな事を思った。



「そうだ、ちー。俺もう大好きって言わないからね」


「えっ!?いきなり何!?酷いっ!」


「もう言わないって決めたから言わない」




フフンと笑う翼の服の裾を掴むと千夏は顔を膨らませた。


すると翼は優しく微笑んで呟いた。




「…ちー、愛してるよ」





ほらね。

また恋に落ちた。





翼は簡単に私を恋に落とす。

私も簡単に翼に恋に落ちる。





何度も
何度も


何度でも……。





















【何度でも恋に落ちる・END】