「颯斗にー、大好きだよ」



「俺も、大好きだ」



離れたくなくて、キュッと服を握る手に力が入った。



離れたくない。



離れたくない。



離れたくない。



でも、離れなくちゃいけない。



大丈夫、一生のお別れじゃないんだから。



ちょっとの間だけ、ちょっと離れたところに行くだけなんだもん。



我慢しよう。



私が素敵なお姫様になるまでの間だけ…



お別れだね、颯斗にー…



私は力を抜いて、スッと腕を離した。



「じゃあね!颯斗にー!」



最後は笑顔で。



お姫様は大切な人のお見送りに泣いたりしない。



そしたら、ほら…



「おう!」



颯斗にーも笑顔で返してくれた。



最後に頭をポンポンと撫でると、颯斗にーは後ろを向いて行ってしまった。



もう、振り返ることはなかった。