独り占めしても、いいですか?

☆*:.。. .。.:*☆



キーンコーンカーンコーン



チャイムが鳴った。



それを待っていたかのように、先生が挨拶の号令をかける。



「起立…礼」



頭を下げて、凛のところに向かおうと一歩踏み出した瞬間…



「あの!

ひよ姫…だよね⁉︎

サイン貰えちゃったりとか…する⁉︎」



「あ、私も私もー!」



近くの席の女の子が、振り返ってメモ帳とペンを差し出してきた。



「へっ⁉︎

え、えっと、その…」



私が曖昧な返事をすると、その子は不思議そうな顔をする。



どうしよう…私、サインなんて持ってないのに…



だって芸能人じゃないんだもんっ!



そんなことをしている間に、気がつけば私の前には行列ができていた。



廊下には、他のクラスや学年の人まで集まってくる。



写真を撮ろうと、携帯取り出そうとする人までいた。



私は周りの視線が怖くなって後ずさり。



いやな汗が額を流れる。



みんなの視線が、声が、私を嘲笑っているかのように感じた。



やだ…なんで私ばっかり…



目を閉じたくなる。



耳を塞ぎたくなる。



独りぼっちみたいな感覚が私を襲う。



もう嫌っ…



「ねぇ…ひよ姫?」



その声でハッとする。



あっ…サイン…



サインしなくちゃ…



目の前の紙とペンが凶器のように感じる。



震える手を恐る恐る近づけると…