独り占めしても、いいですか?

「キャーーー!」



一歩、また一歩と足を進める。



すごく緊張するけど、手を引いてくれている凛の手が温かい。



ステージの中央まで来て、観客の正面を向いた瞬間…



「……っ⁉︎」



足がすくんだ。



あの時の光景と、重なった。



あの夏の日のステージと、重なった。



真っ暗な観客席。



会場の中で、私のいる場所だけが照らされている。



ドレスに身を包んだ私。



暗闇の中にいる得体の知れない視線。



絢香の代役としてステージに立った、あの日のステージ。



耐えきれずに倒れてしまったステージ。



あの時の光景とそっくり重なる。



あの時の恐怖が蘇ってくる。



怖くて、苦しくて、逃げ出したいと何度も思った。



観客席の照明が消えただけで、観客のみんなは何も変わらない。



1stステージや2ndステージと同じように頑張ればいい。



ただ観客席の照明が消えただけ…



わかってる、わかってるけど…



やっぱり、怖い。