独り占めしても、いいですか?

その次の日、凛は透の部屋の前へ行くと、下手くそな歌を歌った。



単調なリズムと音程で、強いて惹かれるところと言えばサビの入りのワンフレーズくらい。



正真正銘、凛の作詞作曲の歌だった。



誰が聞いてもひどい歌。



今でもその歌のことを言うと、凛は「黒歴史だ!」って言って口を塞ぐくらい。



けど、その歌には想いがこもってた。



透に対する想いが。



歌詞の1つ1つから、それが伝わってくるような歌だった。



私達からしたら、ただの下手くそな歌だけど、透にとっては世界を変えるくらい、心に響く歌だったんだって。



それから透は少しずつ、いつもの透に戻っていった。



透を暗闇から救い出したのは凛だった。



この『Only One』は、その時凛が作った曲に、透が手直しを入れたもの。



透の手によって、下手くそな歌は最高の歌に生まれ変わった。



もちろん、凛の想いはそのままに。