独り占めしても、いいですか?

「日和、入ろうぜ」



「うんっ」



ガラガラ…



教室の鍵は開いていたけど、中には誰もいなかった。



多分、まだ誰も来てないんだよね。



校門から教室までも、あまり人がいなかったし…



私達、少し早く来すぎちゃったのかも。



「…誰もいねーな」



「うん」



黒板には、座席表が貼ってある。



その横に、提出物を教卓に並べて提出しておくよう指示が書いてあった。



席の順番は出席番号順みたい。



黒板に近づいて私の名前を探す。



……あっ、あった。



窓側から2番目の1番後ろ。



そこそこ目立たない席だし、ラッキーかな〜。



「日和1番後ろかよー」



「へへっ…凛は1番前多いよね」



凛は『一ノ瀬』の『い』だから、出席番号順は1番になることが多い。



いつも、名前で席を決めるなんて不公平だって文句言ってるんだよね。



「ちぇー

まあ、あいつも同じだよな」



渋々納得したようにため息をついた。



あいつっていうのは、多分透のこと。



透は『天沢』の『あ』がつくから、凛と同じく、出席番号は1番が多い。



「凛、ホントに透のこと大好きだよねっ」



クスクスと笑いながら言った。



「はー?

んなわけねーよ!

透はどっちかっつーと俺ん中では敵のポジションだ!」



こんなこと言ってるけど、本当は嘘。



いわゆる照れ隠し?



だって座席表を見ただけで透の名前が出てくるんだもん。



凛は困った時いつも透を頼るし、透のことを1番理解してるの、私知ってるよ?



もちろん透にとっての凛も同じ。



2人は5人の中でも1番付き合いが長いから、ちょっぴり羨ましい。



5人の繋がりとは少し違う、もっと強い絆があるみたいに感じる。



私も、そんな友達が作りたいな…