さまよう爪

2人で少し眠った。

夜中。

目を覚ました時にわたしの胸の中で丸まって寝ていた彼を見るのは、母性本能か、胸がきゅんとする。

わたしが頼む前に直人が裸のまま歩いて、台所からお茶を持ってきてくれた。

本当は裸のまま台所になんて行ってほしくはなかったけれど、言わなかった。

今日はえらく甲斐甲斐しい。

お茶は直人がチョッカイを出してきてそのままのやつだったのですっかり冷めていた。

透き通った赤をして、味は、酸っぱ苦くて、顔がぎゅっとなる。

直人は平気そうな顔でぐびぐび飲んでいた。

『酸っぱくて、苦いね?』

彼は答えない。考え事か。それともシカトか。たいした質問じゃないから、わたしはもう訊かない。