さまよう爪

「後続の車両が遅れているため、時間調整のために数分間停車します」と車内にアナウンスが流れる中、あとひと駅で着く。もうすぐだ。

そう思うと、一気に体の力が抜けたような気がした。

ちょっと触っただけでも、肩が凝っているのがわかる。

わたしは楽にしていようと、ゆったりと椅子の背にもたれた。

そのとき突然、キン、と耳鳴りがした。

続いて周りの音が聞こえにくくなる。

うそ、どうしてだろう。

たった今まで平気だったのに。

自分に疑問を投げかけている間にも、額から冷たい汗が止めどなく流れてくるのがわかる。

出来れば我慢して、普通のフリをしていたいところだけれど、そんなことをすればもっとひどくなるのは目に見えている。

周りへ迷惑をかけるわけいかない。

一番いいのは、目的の駅に到着してからどこかに座って、少し休ませてもらって。

回らない頭でどうするかを考えていた時だった。

「……大丈夫?」

突然声をかけられ、わたしは顔を上げる。