さまよう爪





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結婚式の日。晴れ。

教会での式が済み、真っ白なウェディングドレスに身を包んだ愛流が、夫となる直人に裾をを踏まないように庇われながら、しずしずとこちらへ歩いてくる。

わたしは出席者のみんなと、2人に向かってカゴの中の色とりどりの花びらを投げる。

フラワーシャワーをあびた愛流が、こちらへ向かって、最高に幸せそうな顔で笑う。

直人とも目が合って、気まずそうな照れくさそうな申し訳なさそうな何とも言えない表情をされ、こちらも反応に困り、ありったけの花を投げて浴びせれば、口に入ったのか、ペッペッと苦しそうに顔をしかめる。

先程の厳かな教会式の最中、わたしはずっと、目をこらして十字架を見ていた。

神様。というものが本当にいるのなら教えてもらいたい。

わたしが誓い合いたい相手は、あなたの前に立てるのでしょうか。あの人は、この15年の間に捕まっていないでしょうか。何かもっとひどい罪を犯してはいないでしょうか。そしてそもそも――生きているのでしょうか。

純白のドレスの穢れのなさは、わたしには到底似合いそうにないと自分で確信した。

爪を塗られて、彩られた指先は、同時にあの男の思いのままに、たぶん汚されていたのかもしれない。

彩ること。と、汚すこと。は、たぶんきっと、同じこと。ずっと、ずっと、同じこと。