さまよう爪

ドレッサーに袋から出したディオールのコスメの箱を綺麗に並べる。

それと一緒に並ぶ香水の瓶。

JILL STUART(ジルスチュアート)のキャップについた花の中心にはライトサワァイアのスワロフスキーがはめ込まれているのも、大人な可愛さを引き立てている。

シャネルの、シンプルで洗練されたボトルデザインは、一目でシャネルとわかるほど。特に、シャネルの香水の中で一番有名な、キャップがまるでダイヤモンドのようになったN°5のボトルデザインは、スマホのケースなどにアレンジもされている。とても身近にながらハイブランドなので、高価なものが多いけれど、さりげなく飾るシャネルの香水瓶は、部屋を一瞬で優雅なものにするのは女王の風格。

その光景がまるで何かの宗教の祭壇のように思える。なかなか絵になっている。

絵画で、テーブルの上に置かれた果物や食器や花々を描いたものがあるけれど、絵を描く為にああいったものを並べた画家も同じような気持ちだったのかもしれない。

面白い気持ち。

ふいにわたしは顔を横に向けた。

カーテンのわずかに空いた隙間から、外を見た。

街灯か通りかかった車のライトなのか、光が窓に反射して。

すぐに光は消える。