さまよう爪

わたしは松屋をあとにした。

松屋の中央口を背にして、中央通りを右側に歩く。

陽が夕日に変っている。

道行く人々。

そんな人達の間を縫うようにして歩行者で溢れる中央通りを1人進む。

痛い。靴を踏まれた。

謝罪の声も聞こえない。

相手を見る。カップルが見えた。

わたしの足を踏んだのはカップルの男のほうだった。背も高くてスタイルがいい。8頭身は確実にある。

女性のほうは幸せそうしている。けど、こんな男は100点満点の評価中マイナス5000点くらい。

ああ、すごく痛い。なんでこんなに痛いのだろう。

痛いんですけど。気づきもしないわけ?

それとも人を傷つけていることに気づいていても無視しているの?

心の中で溜息を吐いて道を歩く。

道行く人々のことがどうにも気になる。

中年夫婦の旦那さんのほうがズボンのジッパーを開けて歩いてる。

マイナスだ。

まだまだ明るい街中で、歩きながらチュッと彼女の唇にキスをした男はマイナス5000点。

歩きながらセルカ棒を振り回し、きゃあきゃあうるさいカップルを見つける。マイナス5000点。

女の子の肩を顔のいい男が抱いている。

彼がわたしの視線に気がついて少し微笑む。ウィンク。

うわナルシスト。美男子でも気持ち悪い。

マイナス4000点。

彼女が重そうな荷物を持っているのに持とうとしない男マイナス5000点。

服の袖で鼻を拭いた男。汚い。マイナス5000点。歩きタバコ。最悪。マイナス7000点。

小さい子から目を離して歩きスマホをしているお母さん。マイナス5000点。街中で下ネタトークの若者。マイナス3000点。

マイナス3000点。マイナス2000点。マイナス5000点。

マイナス。マイナス。マイナス。

疲れた。わたしは何をやっているのだろう。

靴を踏まれたくらいで不機嫌になり過ぎだ。