さまよう爪

わたしは結局このオフホワイトのドレスを購入することに決めた。

自宅のクローゼットの中にあるドレスやワンピースのことが頭に思い浮かんだ。

ものが増え過ぎて、自分で管理出来る範囲から飛び出してしまったらそのときに捨てるなり売るなりを考えよう。

試着室で再びカバーを冠ってドレスを脱いで服を着て靴を履く。

カバーは傍らのゴミ箱に捨てた。

バッグを持ってから忘れ物がないが振り返る。あった。

コートのポケットから落ちた、ポケットティッシュが落ちていた。

いけない。拾う

楽しい思いをしたのに、そこに忘れ物があるのは少し間抜けだ。

レジカウンターでドレスが畳まれる。

店員が店の外まで袋を持ってくれてわたしに渡したあとで頭を下げる。

顔がほころぶ。洋服を買うのはいつでも楽しい。