予想もして無かったタイミングでキスをされ、寝起きの低い声で囁かれ、だんだんと動悸がしてくる。

ふいうちのキス。という少女漫画にしか出てこないような言葉なんて絶対発音したくないのに、脳を占めるのはそればかりだった。顔の皮膚がじわじわ熱を持つ。

トイレに行ったついでに顔でも洗って熱を冷ましたかったが今は無理なので、フリードリンクコーナーの冷たい水を飲んで熱をひかせ、心臓を少し落ち着かせて、彼のところへ戻った。

ブースの扉を開けると、わたしが寝てたほうへ背中を向けて寝ている瀬古さんがいた。寝ている? いぶかしみながらも、わたしも元の場所に丸くなる。

そうすると、瀬古さんはわたしが戻ったことに気がついたのか、こっちに寝返りを打ってわたしをまた抱き締めた。

「……マコ?」

「……」

わたしは、石のように固まった。

小野田すみれです。

何とか動かせる口で言えば、顔を上げた瀬古さんすら、ひきつった驚愕の表情のまま、顔が硬化していた。

何でだよ。

何故あなたが固まる。