さまよう爪

「ゴーインだね」

声だけで瀬古さんが若干呆れているのがわかるがあとにも退けず。

2人で横になり、借りたブランケットを半分わけてかけたとこまでは良かったんだけど。

空調が低く、末端冷え性持ちで低血圧のわたしはあっという間に、手と足先が冷え切り寝るに寝れなくなってしまった。

両手をこすりあわせる。

思わず、寒い。呟くと瀬古さんがわたしの手を掴み

「小野田さんの手っていつも冷たいよね。冷え症?」

少し戸惑う。

「末端だけですけどね。手と足先が冷たくなっちゃって」

だから浮腫みやすい。

冷えにはね豚肉がいいんだよ。そう教えてくれたあたたかい瀬古さんの手がじんわりと冷え切ったわたしの手をあたためた。

「俺の脚の間に挟んだら? 少しはあたたかいと思うよ?」

「……何のこと?」

「その冷え切った足のこと。あたたまると思うけど」

いやいやいや。さすがにそれは。

「……それはありがたいですけどわたしだけあたたまるっていうのも」

「そう気にすることないよ。寝れないんでしょ?」

うんとえっと。数秒悩んだのち――じゃあ、お言葉に甘えて。

そうっと足を伸ばすと、彼が両脚で挟んでくれた。服越しにでも伝わってくるじんわりとしたあたたかさ。

「……あったかい」

「なら良かった」

それじゃあ寝ますか。

やっと寒さから解放されて、寝れると思った。

フラットシートに、V字の形で2人で横になる。