さまよう爪

なんか男のイメージといったら友人を大勢かき集め。

今日は結婚前夜の最後の日だぜ。イエーー!!  みたいな。

今日は最後の悪あがきだ。イエーー!! だったり。

女性はゴールで絶頂の幸せだけれど、 男にしてみたら。

あーこれで俺も型にはめられるんだな。

あーこれで俺も逃げれなくなるんだな。

あーこれで俺もATMになるのだろうか。

それでは皆さんグラスを持って。

あーついに始まったな。カーンパーイ。

そんな盛り上がりを想像していた。

「ここは変わらないな。お前も」

話を切り出したもののまただんまりの直人に、顔をちら見され、部屋の中もちら見され。言われた。

久しぶりに会った人に、変わってないな。と言われたら、嬉しいだろうか。わたしは微妙だ。

過去の女としては、ちょっとは変わったと言われたい気がしないでもない。

ただ、変わったな。と言われるのもあまり。

何だろう。この感じ。

「どう変わってない?」

「……どうって」

ボサボサの頭を更にわしゃわしゃ掻いて。そういうのメンドイよ。と、ぼそり。

「何か落ち着くっていうか。戻ってきた感じ」

続けてぼそり。そして、ほっとレモンを飲もうとしてやっぱりまだ熱くてやめて。

「俺やっぱりすみれがいい」

マグカップを両手で包み込みながらこちらも見ずに言った。

「それは自分勝手すぎるんじゃない」

すかさず返したわたしに直人は顔をあげて。

しょうがねぇじゃん。

「告白したのだって今を逃したらいつ出来るかわからないって思ったんだよ」