家を出てすぐ、兄は腕時計を確認する。



「…8時か……」



チッと短い舌打ちも聞こえる。


一体何を焦っているのだろうか。

私は兄の顔を仰ぐ。

じっと見すぎたせいだろうか、兄と目が合ってしまった。



「…なに?」



一言だけ。
すぐに目を逸らす。

私は、暫く黙っていたが、



「…なんで今日そんなに焦ってんの?」



ずっと気になっていた質問を兄に投げかける。

兄は、あぁ、と短く言ったあとに、優しく微笑み、



「まぁ、時期に分かるって」



そう言うと車のエンジンをかけた。