「…………恋人のフリ?」



一気に身体の力が抜けた。

緊張の糸が一気に解けたような、そんな感覚だった。





良かった…





不覚にもそう思ってしまう自分がいる。


もう、相川くんを諦めよう、そう心に誓ったのに。


相川くんは浮気をしていなかった。

その事実を知ってしまったからにはーーー



「……また好きになっちゃうじゃん」



私は枕に顔を埋め、静かにボソッと呟いた。



嫌いになりたかったのに、なれない。

心がモヤモヤする。


これも全て、相川くんのせいだーーー。







私はこの時、兄が部屋の扉にもたれて、私のこの独り言を聞いていたなんて知る由もなかった。