私と彼と兄と

雅美、と呼ばれた彼女が泣いているのが見えた。





なんかしたんじゃ…





彼女が家から出ていくのを目で追うと、私はそろりとリビングから出た。


ーーーと、



「うぁっ!!!」



階段の前に立っていた兄とぶつかってしまった。



「…ってぇ。…あ、あぁ、おかえり」



まるで先程のことを、何事も無かったかのように済ませている表情の兄。



「…ただいま」



あまり干渉しない方が兄のため…だと思い、私は素っ気なく返事をして、自分の部屋に向かった。