特に毎日に不満もなく、少し退屈なくらいが平和でいいなと思う。
そんなことを考えながら久木杏(ひさきあん)は古典の授業を受けていた。
(あっ)
肘を動かしたら、消しゴムを落としてしまった。
気づいた時にはコロコロと隣の席の下に。
「ごめん、消しゴム取って」
小さな声で頼む。
隣の席は、男子だ。少し緊張する。
3人姉妹の真ん中として、女同士のことにかけては自信があるものの、異性と関わる機会は少なかった。
「はい」
ころりと手渡された。
少しだけ、手が触れる。
(そう、間島だ。間島裕(まじまゆう)。)
その男子の名前を思いだした。
短髪が日に明るく、少しワイルドな雰囲気を醸し出している。
「ありがと」
小声で言うと、もう一度「どういたしまして」と返ってきた。
黒板に向き直ると、授業が進んでいて、あわててノートを取る。
(なんだろう……)
いつもと自分が違う気がする。
心臓がばくばく言っていた。
先生の声が耳に入ってこなかった。
そんなことを考えながら久木杏(ひさきあん)は古典の授業を受けていた。
(あっ)
肘を動かしたら、消しゴムを落としてしまった。
気づいた時にはコロコロと隣の席の下に。
「ごめん、消しゴム取って」
小さな声で頼む。
隣の席は、男子だ。少し緊張する。
3人姉妹の真ん中として、女同士のことにかけては自信があるものの、異性と関わる機会は少なかった。
「はい」
ころりと手渡された。
少しだけ、手が触れる。
(そう、間島だ。間島裕(まじまゆう)。)
その男子の名前を思いだした。
短髪が日に明るく、少しワイルドな雰囲気を醸し出している。
「ありがと」
小声で言うと、もう一度「どういたしまして」と返ってきた。
黒板に向き直ると、授業が進んでいて、あわててノートを取る。
(なんだろう……)
いつもと自分が違う気がする。
心臓がばくばく言っていた。
先生の声が耳に入ってこなかった。