楠見の引退の日まで残り一日になった。

午前8時を回った頃。




…もう、出発したかな




澪和は教室の自席につき、一人で楠見の事を考えていた。

平日のため、楠見の応援にも行けない。




……今日から楠見先輩がいなくなるなんて…




考えられなかった。

一緒にいるのが当たり前の日常。

悲しかった。

さみしかった。



「海空はいるか?」



ーーーと、教室のドアのところで澪和の名前を呼ぶ声が聞こえた。

クラスメイトに腕を掴まれ、澪和は自然とドアの方へ引き寄せられる。


見るとそこには、なるほど歓声も上がる美男がーーー



「海空…」


「……御影先輩?」



御影はじっと澪和を見て、しばらくしてから安堵の表情を見せた。



「元気そうでよかった」


「……っ!」



御影は澪和の事を心配してわざわざクラスまで来てくれたらしいのだ。




…優しい




周りで女子がキャーキャーうるさい。