かといって、コイツの勝手を許す訳ではない。
俺は暴れるコイツを、力づくで追い出した。
が、これは夢か、夢なのか。
そう思わざる終えなかった。

今さっき追い出したばかりで部屋に戻ったら、また変質者がいる光景があった。

信じられない、俺は追い出した。
なのに何故コイツは部屋にいるんだ。

矛盾しているが、俺は今、冷静的に混乱していた。
確かに矛盾している、いや、日本語として成り立っていない。
が、それが実際今の俺の心境なのだ。

「何をした」
混乱状態で出た言葉がこれ。
「私だけの時間を戻したの」
混乱状態に言われた言葉がこれ。
「瞬間移動とはちょっと違うかな~」
コイツの言っている意味がわからなかった。

そんなことあるわけない。
いくら科学が進歩したって、時間を操ることなんて不可能だ、絶対に。

なのにコイツは平然とやってのけたというのか。
いや、そんなことはありえないんだ。
俺が何か見間違いした、それ以外どんな可能性がある。
これは何かの間違いなんだ。

「用はなんなんだ、聞くから出てけ」
まさか自分からそんな言葉が出るとは思ってなかったが、これが得策だと思うことがいいという判断に至った。

「あっ忘れてた。あのね、一緒に来てほしいの、ディスに」

ディス。
さっきも聞いた。
その時コイツは、『君達で言う異世界』そう言った。
その異世界のディスとやらに一緒に来いと、そういう訳か。
俺は素直に答えた。
「嫌だ」と。

普通に考えてそうだ。
さっきの瞬間移動のような可笑しい現状を目の当たりにして、そんな得体の知れないディスとやらに、進んで行きたいと願う奴がいるとでも言うのか。
いたとしたら、ソイツは可笑しい。

「そっか~、やっぱりそうだよね。じゃあさじゃあさ、これならどう?これから試しに行ってみて、それでもやっぱり嫌だって言うなら、私は出直す」
試しに。
その一言が俺の心を揺らした。

試しにと言われると、じゃあちょっとだけ、という人の心理が働いたのだろう。
コイツはそんな知識、持ち合わせていないだろうから、思いつきの発言と考えるのが妥当だろう。

が、そこから俺は、俺が行くと言ったらコイツがどう言い訳するか楽しみに思った。
「行ってみるだけなら興味がある」