一年A組、出席番号四番、これが俺。
知っているから一応彼女の名前を探すと、
「私B組だって!」
と彼女が割り込んできた。

ここ、私立光明高校は、特進科と普通科に別れていて、クラスは成績順。
俺も彼女も特進科だ。
一学年六クラスで、A組からF組があり、半年に一回クラス替えがある。
それによって、学力の差が明らかになる。

このシステムに反対する者もいるが、教育熱心な親に受験を勧められる者もいるらしい。
俺の場合は、特に祖母に勧められた訳ではない。
もし勧められたとするならば、中学教師だろう。

元々勉強は、嫌いではないが好きでもない為、それなりのところに行くつもりだった。
が、中学教師らが勿体ないと言い続けるので、日本でもそれなりの進学校であるここへ入学した。

「槙くんは当然みたいな顔してるね」
彼女は俺を覗いてきながらそう言った。
ああそうだ。
当然に決まってるだろ。
見ればすぐ覚えられるんだから。

ただ、お前もそれなりに凄いと思うぞ。
B組と言えど、簡単に入れるものではない。
だが彼女に祝いを言うのも間にさわるから、言わないことにしておく。
「あっ!ねえねえ見て見て!私と槙くん、出席番号一緒~!凄いね!」
ニッと彼女は笑う。
一瞬でも微笑みそうになったのは、不覚だ。
彼女には何があっても内緒か。

「じゃあな」
照れ隠しか判らない。
俺は彼女に背を向け教室に入る。
「帰り、一緒に帰ろうね!」
彼女の言葉に返答はしない。
けれど、聞きたいこともあるし、一緒に帰ってやろうとは思う。
「考えとく」
こんな継ぎはぎをして、俺は彼女の視界を外れた。

黒板に書かれていた席に座る。
そこは窓際で、学校の裏山がよく見えた。
また、同じように見える正門前の広場には、桜が波のようにゆらゆらと散り行く。
俺はそんな情景から、ふと目を反らした。