蔵の中にある多くの文書は禁書に近い。
代々の当主が何か凶事があった時に書き記し、同じようなことがあれば対処するようにと書き記されてある。
主さまの家系図はとても長く、先代の潭月以前の当主には何人もの妻が居たため血族は多い。
またこの禁書を読めることに感動した晴明は、ぶつぶつと独り言を言いながら読み続けていた。
「あのー、ちょっとそこの陰陽師うるさいんですけどー」
「このような面白きものを今までよくも隠していたな十六夜」
「…お前は俺の家系の者じゃないだろうが。第一見せること自体禁じられているんだからな」
「ほほう、解せぬことを言う。雪男とて血族ではなかろうに。何故雪男が許されて私には許されんのだ。端的に述べよ」
こういう時の晴明はしつこく、主さまは蠅を追い払うようにして手を振ると、一冊の書物に目星をつけた。
「地下のあれが居着いた時の当主の書物だ。…何やら封印がされてある」
――他の書物には封印などされていなかったが、何故かこの一冊には厳重な封が施されてあり、主さまは目を閉じて精神を集中させると解錠の術をかけた。
…が――
「…っ」
指先が雷に打たれたように痺れて書物を取り落とすと、雪男と晴明が主さまに寄って焦げた指先に眉をひそめた。
「なんだそれ。解けないのか?」
「おかしいな…これで解けるはずなんだが」
「どれ、私が…」
今度は晴明がその書物を主さまから受け取ろうとしたが――今度は手にすることすら許されず、閃光を放って埃っぽい床に落ちた。
「十六夜にしか持てぬ、か。そなたが紐解く他あるまいな」
「…俺は本を読むのは苦手なんだ」
「では本が好きな朔に手伝ってもらおうか」
「朔を引きずり込むな。…あれが知るにはまだ早い」
息吹と子供らにはとことん甘い。
主さまはありとあらゆる術を試すため、また精神を集中して書物に意識を傾ける。
およそ良い予感は全くしない。
全くしないどころか、悪い予感しかしなかった。
代々の当主が何か凶事があった時に書き記し、同じようなことがあれば対処するようにと書き記されてある。
主さまの家系図はとても長く、先代の潭月以前の当主には何人もの妻が居たため血族は多い。
またこの禁書を読めることに感動した晴明は、ぶつぶつと独り言を言いながら読み続けていた。
「あのー、ちょっとそこの陰陽師うるさいんですけどー」
「このような面白きものを今までよくも隠していたな十六夜」
「…お前は俺の家系の者じゃないだろうが。第一見せること自体禁じられているんだからな」
「ほほう、解せぬことを言う。雪男とて血族ではなかろうに。何故雪男が許されて私には許されんのだ。端的に述べよ」
こういう時の晴明はしつこく、主さまは蠅を追い払うようにして手を振ると、一冊の書物に目星をつけた。
「地下のあれが居着いた時の当主の書物だ。…何やら封印がされてある」
――他の書物には封印などされていなかったが、何故かこの一冊には厳重な封が施されてあり、主さまは目を閉じて精神を集中させると解錠の術をかけた。
…が――
「…っ」
指先が雷に打たれたように痺れて書物を取り落とすと、雪男と晴明が主さまに寄って焦げた指先に眉をひそめた。
「なんだそれ。解けないのか?」
「おかしいな…これで解けるはずなんだが」
「どれ、私が…」
今度は晴明がその書物を主さまから受け取ろうとしたが――今度は手にすることすら許されず、閃光を放って埃っぽい床に落ちた。
「十六夜にしか持てぬ、か。そなたが紐解く他あるまいな」
「…俺は本を読むのは苦手なんだ」
「では本が好きな朔に手伝ってもらおうか」
「朔を引きずり込むな。…あれが知るにはまだ早い」
息吹と子供らにはとことん甘い。
主さまはありとあらゆる術を試すため、また精神を集中して書物に意識を傾ける。
およそ良い予感は全くしない。
全くしないどころか、悪い予感しかしなかった。

