主さまの気まぐれ-百鬼夜行の王-③ 

母は明るく太陽のような人だ。

周囲からはあの父を射止めた稀代の女だと称賛されては皆に愛される。

朔と輝夜にとっても憧れの人。


「父様寂しがってなかった?」


「お忙しそうであまりお話してません」

「そっか。雪ちゃんは?」


「雪男も…」


事情を話してしまうと悟られてしまうーー子供たちにとってもこのことは隠しておきたいことだったため、曖昧にはぐらかして祖母の枕元に座った。


「なんてきれいな子たちなの」


「そうでしょそうでしょ?ふたりとも主さまに似てかっこいいでしょ?」


親馬鹿炸裂な息吹にふたりが嬉しそうに笑う。

輝夜はどちらかといえば息吹似だったが、明らかに普通ではないのは確かだ。


「お祖母様、肩をお揉みします」


鬼族の血が流れているため力が強く、加減が難しいが、百合の肩に触れた時その細さに息が止まった。


人は儚く長く生きられないが、百合はもっと短い。

朔は気をつけながら肩を揉んで祖母を気遣った。


ーーそして晴明は蔵に籠っている主さまたちに会いに行くと、莫大な量の書物に埋もれている様を見て目を輝かせた。


「おお、なんとも魅力的な場所だろうか」


「…これのどこが魅力的だ」


「地下のあれに会う前に私も手伝おう」


つまりは書物を紐解きたい欲求が勝っていただけなのだが、主さまたちにとってはありがたく、三人で黙々と目を通していく。

…調べれば調べるほどに謎が深まってゆく。

地下のあれは、起こしてはならないものなのかもしれない。


主さまは神経を尖らせながら目を通し続けた。