目を合わすことができないほどに、目の前の男は異彩を放っていた。
静かなその口調も表情も――一心に自分に向けられていて、百合は身を竦ませながら頭を下げ続けていた。
「…謝罪してほしいわけではない。何故会いに来たのか、それを問いたいだけだ」
「私はもう長くありません。泣く泣く娘を手放してしまった若き頃の自分の判断をずっと悔いていました。罵倒されてもいい…一目娘に会って謝りたいのです」
「…顔を上げてくれ」
恐る恐る顔を上げた百合は本当に息吹にそっくりで、普通に老いていけば息吹はこうなっただろう。
百合はまだ若く見えたが病に侵されてとても痩せていて、主さまはまるで病に侵された息吹を見ているような気分になって歯を食いしばった。
「…俺は今まで散々息吹を泣かせてきた。息吹の憂い、息吹が悲しむこと…そういったものからは今後もずっと遠ざけて共に生きてほしいと思っている。…お前は息吹を泣かせる側の者か?」
「…分かりません。赤子のあの子を手放して以来、再会などできるはずがないとずっと思っていました。あの子があなたの元で幸せに生きている…その報だけが私の幸せでした」
――純粋にただ会いたい――
死を目前にして百合からは焦りを感じた主さまは、傍に座ってじっと黙っている晴明を肩越しに振り返って尋ねた。
「…あとどのくらい持つ?」
「せいぜい半年。私の全力を以てしてもその程度だ。すまぬ」
「いや、お前のせいじゃない。…百合…と言ったな」
「はい」
「息吹に会わせてやる。お前の残りの生、共に過ごすことができるかどうか…それは息吹の選択に委ねる。それでいいか」
百合の顔がぱっと輝いた。
その笑顔がとても息吹に似ていて、主さまは思わずふっとはにかんで、百合を見惚れさせた。
静かなその口調も表情も――一心に自分に向けられていて、百合は身を竦ませながら頭を下げ続けていた。
「…謝罪してほしいわけではない。何故会いに来たのか、それを問いたいだけだ」
「私はもう長くありません。泣く泣く娘を手放してしまった若き頃の自分の判断をずっと悔いていました。罵倒されてもいい…一目娘に会って謝りたいのです」
「…顔を上げてくれ」
恐る恐る顔を上げた百合は本当に息吹にそっくりで、普通に老いていけば息吹はこうなっただろう。
百合はまだ若く見えたが病に侵されてとても痩せていて、主さまはまるで病に侵された息吹を見ているような気分になって歯を食いしばった。
「…俺は今まで散々息吹を泣かせてきた。息吹の憂い、息吹が悲しむこと…そういったものからは今後もずっと遠ざけて共に生きてほしいと思っている。…お前は息吹を泣かせる側の者か?」
「…分かりません。赤子のあの子を手放して以来、再会などできるはずがないとずっと思っていました。あの子があなたの元で幸せに生きている…その報だけが私の幸せでした」
――純粋にただ会いたい――
死を目前にして百合からは焦りを感じた主さまは、傍に座ってじっと黙っている晴明を肩越しに振り返って尋ねた。
「…あとどのくらい持つ?」
「せいぜい半年。私の全力を以てしてもその程度だ。すまぬ」
「いや、お前のせいじゃない。…百合…と言ったな」
「はい」
「息吹に会わせてやる。お前の残りの生、共に過ごすことができるかどうか…それは息吹の選択に委ねる。それでいいか」
百合の顔がぱっと輝いた。
その笑顔がとても息吹に似ていて、主さまは思わずふっとはにかんで、百合を見惚れさせた。

