「ま、那菜が偶然忘れ物してくれたからわざわざ探す手間も省けたけど」
「なにそれ……っ」
「それで、どーなの?
自分の気持ちに答えは出た?」
全部、全部、見透かしたような太雅の口調。
手の平で転がされていたようでだいぶ悔しい……。
「た、太雅こそどうなの……っ?
自分を変えたいとか言って……」
「変わりたい。
だから那菜が必要なんだよ」
「変われたら……?
あたしは要らないの?」
私の言葉を聞いた太雅は少し目を見開いて驚いてから可笑しそうに笑う。
「な、なに……もう……!」
「これでもオレ、告白のつもりだったんだけどー?」
「え……?」
「本当……肝心なとこ鈍感な所も健気な所も……可愛い」
「……な、か、か可愛くない……!
ま、またそうやってからかう……!」
「じゃあからかってないって分かるまで言い続ける」
「いらないっ……!
もう分かったから……っ」
「それじゃあ、那菜の返事は?」
……ズルい。
そんなの私の答えも1つに決まってる。
「み、見て分からない……っ?」
「……はは。
分かるよ。
充分過ぎるくらい」
「もう……!
太雅の馬鹿……っ」
「そんなオレに惚れたくせにっ」
そうだ。
こんな女ったらしに惚れちゃったんだ。
仕方無い。
気持ちに鍵を掛けることなんて出来なかった。
「そ、そうだよ……っ。
そんな太雅のこと……好きになったの……!」
それを聞いて太雅は満足げに笑う。
そして立ち上がった私を太雅も席を立って抱き締められる。
「オレも、だよ」
耳元で囁く甘い声も……
何もかもがドラマのワンシーンのようでクラクラする。
こんな気持ちになったことが今までに一度も無かった。
太雅だから……こんなにも仕草、言葉の1つ1つで幸せだと思えるのかな……?
太雅がいるなら……
私はなりたい私に変わっていける気がする。
きっと……いつか別れがきてしまうかも知れない。
そうだとしても……私は太雅の傍にいたいと願う。
どこか泣きたくなってしまうほどに愛しい人の背中に腕を回して、ぎゅっとぎゅっと抱き締め返した…────────
【END】



